土地の持分放棄と農地法3条許可書

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放棄なのに許可いらないんですか?

司法書士のもとに、ある日、Aさんという農地の共有者から相談が持ち込まれました。
 
A「父の代から持っている農地の持分を放棄したいんです。もう農業もしませんし、他の共有者(叔父)が全部管理しています。持分移転には、農地法の許可が必要ですか?」
 
司法書士は少し考え、こう答えました。
 
司法書士「それは“所有権の放棄”という扱いになりますね。農地法の許可は不要です。」
 
Aさんは不思議そうな顔。
 
A「でも、農地法の許可や届出って、農地の所有権を移転するときは必ず要るんじゃないんですか?」
 
司法書士は登記簿を見ながら説明します。
 
司法書士「農地法の届出や許可が必要なのは、“他人に権利を移転する”場合です。たとえば売買、贈与、交換など。でも、持分放棄は“誰にも譲らない”行為です。民法の規定により、持分を放棄すると、あなたの持分は他の共有者に帰属します。つまり、持分放棄は、農地法の規制の対象外なんです。」
 
 
A「なるほど……。じゃあ登記のときも、農地法第3条の許可書はいらないんですね?」
 
司法書士「その通りです。農地法の許可書は不要です。」
 
その後、司法書士は「持分放棄を原因としたA持分全部移転登記」を申請。登記も問題なく完了しました。
 
💡 解説(法的ポイント)
第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。